司法予備試験の科目と勉強のポイント
司法予備試験は「短答式試験」「論文式試験」「口述試験」の3つの試験があります。まず、1つ目の短答式試験に合格すると論文式試験を受験でき、さらに論文式試験に合格した場合には口述試験の受験が可能となります。こちらの記事では、それぞれの試験の概要についてまとめています。
司法予備試験の概要
令和6年の司法予備試験の概要は以下の通りです。
- 受験資格:なし
- 試験方式:短答式・論文式・口述試験
- 受験費用:17,500円分の収入印紙を、消印せず、4枚以内で受験願書の「⑯ 収入印紙貼付欄」に貼り付ける
- 試験日程(2024年度):短答式・・・令和6年7月14日(日)、論文式・・・令和6年9月7日(土)~8日(日)、口述・・・令和7年1月25日(土)~26日(日)
- 試験地(2024年度):短答式・・・北海道大学札幌キャンパス(札幌市北区)、仙台卸商センター 産業見本市会館 サンフェスタ(仙台市若林区卸町2-15-2)、早稲田大学早稲田キャンパス(東京都新宿区西早稲田1-6-1)、日本大学商学部(東京都世田谷区砧5-2-1)、立教大学池袋キャンパス(東京都豊島区西池袋3-34-1)、愛知学院大学名城公園キャンパス(名古屋市北区名城3-1-1)、関西学院大学西宮上ケ原キャンパス(兵庫県西宮市上ケ原一番町1-155)、広島工業大学専門学校(広島市西区福島町2-1-1)、 福岡工業大学(福岡市東区和白東3-30-1)
論文式・・・TKP札幌カンファレンスセンター北3条(札幌市中央区北3条西3-1-6 札幌小暮ビル)、ベルサール東京日本橋(東京都中央区日本橋2-7-1 東京日本橋タワー)、ベルサール渋谷ガーデン(東京都渋谷区南平台町16-17 住友不動産渋谷ガーデン タワー)、大和大学(大阪府吹田市片山町2-5-1)、南近代ビル(福岡市博多区博多駅南4-2-10)
口述・・・法務省浦安総合センター(千葉県浦安市日の出2-1-16) - 合格発表時期(2024年度):短答式・・・令和6年8月1日(木)、論文式・・・令和6年12月19日(木)、口述・・・令和7年2月6日(木)
- 合格率(2024年度):未実施のため不明
参照元:【pdf】法務省公式サイト/令和6年司法試験予備試験受験案内 https://www.moj.go.jp/content/001412854.pdf
短答式試験
まず、短答式試験について見ていきましょう。例年7月に行われる短答式試験の科目は、「民法」「商法」「民事訴訟法」「憲法」「行政法」「刑法」「刑事訴訟法」「一般教養科目」の8科目であり、マークシート式で判例知識や条文の知識について問われる試験となっています。また、短答式試験では試験の際に六法の参照はできません。
ここでは、それぞれの科目の概要について解説していきます。
民法
民法については、登場人物が多いことに加えて事案が複雑な事例が多いため、素早く問題を整理する、という点が鍵になってきます。問題を整理するのに時間がかかってしまうとその後の科目に時間が割けなくなってしまいますので注意が必要です。
また、こちらの科目では判例知識については憲法ほど重要ではなく、そこまで深い知識を求められることはありません。この点から、問題演習をしつつ重要判例の結論を覚えるように意識すると良いでしょう。
商法
商法は、細かい条文知識が問われる点が特徴です。ほとんどが会社法の分野からの出題となっており、商法総則や商行為法分野、手形・小切手分野からは例年2〜3問ほど出題されるケースが多くなっています。
このように、商法についてはメインの出題が会社法の分野となるため、試験対策を行う場合にはまずは会社法の条文知識について正確に理解するところから始めるのが大切であるといえます。そのほかの商法総則や商行為法分野、手形・小切手分野については、出題数の少なさなどから対策できていない受験生が多い傾向があります。この部分で点数を取れるようにしておくと、周りとの差をつけられるでしょう。
民事訴訟法
民事訴訟法の特徴は、「条文知識」「判例知識」「学説知識」の3つがまんべんなく問われる点です。このような特徴があるため、何か1つの分野に集中して対策を行うのではなく、3つの分野全体を幅広く学んでおくことがポイントになってきます。
憲法
憲法では、細かい判例知識を問う問題が出題される傾向があります。そのため、試験対策を行う上では判例の学習は必須といえるでしょう。また、短答式試験における憲法の特徴として、全ての選択肢における正誤を判断しないと正解を導けない問題が多い点が挙げられます。このように消去法が使用できないような形での出題がされますので、精度の高い知識が求められます。
行政法
行政に関わる幅広い分野から出題されるのが行政法の特徴です。例えば、行政手続法や行政事件訴訟法、行政不服審査法、情報公開法、国家賠償法などの分野について問われます。こちらの分野については、条例に関する知識よりも判例の知識を問う問題が多く出題される傾向がありますので、判例学習が重要になってきます。
また他の科目と比較すると、問題を解くために正確な判例知識が必要になる場面が多い点も特徴として挙げられます。
刑法
刑法の特徴は、具体的な事例から詳細な判例知識や学説についての知識を問われる点が挙げられます。他の科目と比べると、有力説や反対説といった学説の知識を問われるケースが多いことから、論文とはまた異なる角度からの学習が必要であるといえます。
刑事訴訟法
刑事訴訟法は、刑事事件の手続に関して幅広く出題される点が特徴です。捜査や証拠、公判手続きなどに関して出題されます。こちらの分野についても、民事訴訟法の分野と同様に「条文知識」「判例知識」「学説知識」についてそれぞれをくまなく学んでおくことがポイントとなるでしょう。
一般教養科目
一般教養科目については、文系科目(英語・古典・文学・論理学・日本史・世界史・地理など)から、理系科目(数学・物理・化学・生物・地学など)まで非常に広い分野から教養問題が出題されます。出題形式は選択式となっており、およそ50問の中から20問を選択して解答します。配点は60点となっており、他の法律科目より配点が高い点も特徴です。
一般教養科目は出題範囲の広さと難易度から対策が難しい分野です。そのため、合格者の中にはこちらの科目について対策を行っていない人もいます。試験の際には一度問題に目を通した上で解けそうな問題から解いていく、といった流れになるでしょう。
論文式試験
続いて、例年9月に実施される論文式試験についてご紹介します。論文式試験の試験科目は「憲法」「行政法」「民法」「商法」「民事訴訟法」「刑法」「刑事訴訟法」「民事実務基礎」「刑事実務基礎」「選択科目」の10科目となっています。
この試験では、配布される六法を参照しつつ、具体的な事例に対して論述形式で答案用紙に解答していく方式となっています。制限時間内に答案を書き上げるためのタイムマネジメント力も求められる点も、論文式試験の特徴といえるでしょう。
下記にて、それぞれの科目の概要についてまとめています。
憲法
憲法の問題は、ある法律や行為が憲法に適合するかどうかを問うような問題形式となっています。解答としては、自分の主張はもちろんですが、相手の主張や判例についても加味した形で解答を作成する必要がある点が特徴といえるでしょう。
こちらの科目については、「原告の主張」「想定される被告の反論」「自分の見解」という順で解答していくのが基本の答案の型となっています。この3者間からの検討が厳密に求められているわけではありませんが、事例分析にあたっては、当事者の主張の流れを意識することが重要なポイントといえます。そのため、普段学習を行う上でも多角的に学んでいく点を意識するのが大切となってきます。
行政法
行政法については、長文の事例問題が多いことに加え、現場思考型の問題が多い傾向があります。この点から、問題文の中に解答の方向性を示す誘導が仕掛けられている点が特徴といえます。
そのため、頻出の訴訟要件を覚えるのはもちろんですが、問題文中の誘導にうまく乗った上で、答案の中で問題文中の事実をうまく表現できるかどうかがポイントとなってくるでしょう。問題を多く解くことで現場思考型の問題に慣れておくことが対策になります。
民法
民法の論文式試験でも、短答式試験と同様に登場人物が多く、事案も複雑になる傾向があります。そのため、マーキングや図を書くなどして、素早く事案を整理できるように慣れておくことがポイントになってきます。
事案の整理を行い、「誰が誰に対して不満を持っているのか」「どのような権利が侵害されているのか」「どのような請求をしようとしているのか」などについて、素早く正確に把握することが大切です。
商法
商法では、会社法をメインとした出題が行われます。この場合、「いかに条文を使いこなすか」が重要となってきます。
会社法の特徴として、条文の量が膨大であり、さらにそれぞれの文章が長い上に、条文を引用する準用規定が多くある点が挙げられます。そのため、他の法律と比較すると条文が引きにくいと感じる人も多いのではないでしょうか。
商法についての対策を行う場合には、普段から可能な限り自分の手で条文を引くことを心がけるのが重要です。
民事訴訟法
実務において最も重要な科目のひとつが民事訴訟法ですが、技術的・論理的であるために難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。訴訟手続きに関連する法律であることからイメージがしづらい面もあります。
そのため、こちらの科目についてはまず制度趣旨を理解した上で、原理原則を答案の中で示すことを意識していきましょう。
刑法
刑法の出題の傾向としては、かなり長く詳細な事例問題になっている点が挙げられます。そして、問題としては「甲及び乙の罪責について論じなさい」といった単純な形での出題形式となっているケースが多いといえます。
以上から、まずは長い事案の丁寧な分析が重要となってきます。その上で、具体的な事実から法的な論点を抽出することが求められます。普段の学習から可能な限り具体的な事案を意識することがポイントとなってくるといえるでしょう。
刑事訴訟法
刑事訴訟法は、民事訴訟法と同様に訴訟手続きに関する科目です。基本は、刑事手続きの適法性について問われる内容となっています。
それぞれの手続きの中では時間的な制約があるものが多いため、手続きの流れとともに時間軸も意識して解答することが重要です。どの段階の手続きの話なのかをしっかりと意識して、解答するようにしましょう。
民事実務基礎
民事実務基礎においては、「一定の法律効果が発生するために必要となる具体的事実」を意味する要件事実が一番重要です。民事裁判においては、要件事実の主要や立証が必須となります。この要件事実を答案上で示すことが民事実務科目では非常に重要になります。
刑事実務基礎
刑事実務基礎は、勾留・保釈・公判前整理手続などの刑事手続きや事実認定、証拠方法および証拠調べ手続などについて問われる科目となっています。この中でも特に、事実認定の分野が重要です。
刑法と同様に、長文の事例問題から論点を抽出して解答していく流れになりますが、事実認定については問題文に記載されている具体的な事実を抽出した上で、法的三段論法を使って答案を作成します。ここでは、刑事訴訟の分野と同じように手続きの流れを意識するのもポイントです。普段の勉強から実務を意識し、それぞれの場面において法曹三者がどういった訴訟行為を行っているのか、という観点を持つことも大切です。
選択科目
選択科目は令和4年から予備試験に加わった科目であり、「倒産法」「租税法」「経済法」「知的財産法」「労働法」「環境法」「国際関係法(公法系)」「国際関係法(私法)」の8科目の中から1科目を選んで解答を行います。
それぞれの科目によって重要となるポイントは変わってきますが、いずれも論理の流れを答案上でしっかりと示すことが重要となってきます。この選択科目も他の法律科目と同様に配点されていますので、対策を十分に行っておくことが大切です。
口述試験
例年1月に実施される口述試験の試験科目は、「民事実務基礎」と「刑事実務基礎」の2科目となっており、それぞれに関する問題について、面接で口頭のやり取りで出題される形になります。いずれの科目についても、口頭で解答となると頭が真っ白になってしまう場合があるかもしれませんので、予備校などで事前に口述模試を受けておくのがおすすめです。
それぞれの科目について下記でまとめていますので、参考にしてください。
民事実務基礎
口述試験のうち、民事実務基礎では、事例が記載されたパネルが机の上に置いてあり、その内容を見ながら受け答えをする、という流れとなることが多いとされています。要件事実について質問される傾向が多いといわれていることから、民法と民事訴訟法について理解しておくことが大切といえるでしょう。
刑事実務基礎
刑事実務基礎については、民事とは異なって事案を書いたパネルを用意されていることは基本的にありません。そのため、主査が読み上げる事例から事案の把握を行います。
一つの事例について、前半では刑法に関する実体法についての知識が問われ、後半では刑事手続についての知識を問うという流れが多い傾向があるとされています。
過去問を解くことで問題を解くための力を身につけられる
こちらの記事では、司法予備試験における「短答式試験」「論文式試験」「口述試験」という3つの試験について、それぞれの科目や試験内容について解説してきました。予備試験においては、限られた時間の中で考えをまとめ、それを伝わるように表現するための力も必要になります。その力は過去問を解いていく中で身につけられます。まずは過去問を解くことによって、読解力や論理的思考力、書くスピードなどを身につけていきましょう。
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